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英国造園・盆栽研修

 海外研修体験談 柴垣さん (造園業 )   

  • ロンドンでのテロ事件
    イギリスと日本の風景の見え方の違いについて

  • イギリスの盆栽屋で働いて

ロンドンでのテロ事件

イギリスに来てから三ヶ月が経った。海外での生活、新しい友人、久しぶりの学生生活。挙げれば限の無いほど沢山の経験をした三ヶ月だったと思う。その中で特に印象に残っているのは、とても悲しいことなのだが、ロンドンで起こったテロ事件である。

事件が起こったその日は何の変わりも無い普通の日で、自分はロンドンから離れた学校で授業を受けていたため、事件に遭遇することは無かった。事件の報があった時は、ロンドンで起こったということでさすがに驚いたが、情報は日本に居る時と同様にテレビ・インターネットなどメディアを通じて得ていたため、そこまで現実味があるわけでもなく、何となく他人事のような気がしていた。しかし、事件の三日後にロンドンに訪れた時、その考えは跡形も無く消えて、テロの現実をありありと感じることになった。
 自分の住んでいる町からロンドンのキングスクロスまでは電車で約二十分。いつもはそこで地下鉄に乗り換えてロンドンの中心部へ向かうのだが、その日はテロのために地下鉄が閉鎖されていて、そこからもっとも近いユーストン駅まで歩いて行かなければならなかった。その一駅分の道程は、自分が今まで歩いたどんな道程よりも恐ろしく悲しいものだった。たくさんの警察、メディア、一般人で通りはごった返し、パトカーのサイレンはひっきりなしに鳴っている。壁にはテロ事件で行方不明になった人たちを探すビラが貼られ、通りはバス爆破の調査のため封鎖されている。そして多くの人々が犠牲になった人達に花を手向け悲しみにくれていた。自分が他人事のように感じていた世界が目の前に広がっていたのである。そして、そのときふと感じたのが、自分と犠牲になった人たちと何も変わりはないと言う事だ。自分はたまたま免れただけだと。
 日本に住んでいてはあまり感じないが、こちらに住んでみて、もっと世界の現実に目を向けなければいけないと感じる。

イギリスと日本の風景の見え方の違いについて 

イギリスに来てから約六ヶ月。来た当初は見る物聞く物、驚くことばかりだったが、落ち着いて生活が出来るようになってきた。電車に乗ったり買い物をしたりといった日本に居る時にしていた当たり前のことがイギリスでも抵抗無く出来るようになった。イギリスと言う国に慣れたという事だと思う。たまに日本の友達に会ったりして日本語を話すと「ここはイギリスか?」と錯覚してしまうくらいだ。そんな自分の「日常」となったこの国で"ハッ"と我に返り「イギリスだ!」と思う瞬間がある。それは日本では絶対に巡りあえない風景に出会ったときである。日本に無い様な歴史ある建築物やロンドンの古い町並みを見たときはもちろんなのだが、小さな町や何気ない田舎道などでもそう感じるときがある。ではそういう美しい町並みをどうやって作り上げているか?そこには幾つかの理由が挙げられると思う。まず、第一に全ての家に統一感がある(屋根、壁などの色が統一されている)。第二に緑が多い(日本に比べて街路樹などが格段に大きい)。第三に電信柱が無い。第四にむやみやたらと看板広告が無い。挙げればきりが無いと思うのだが、これだけでも随分と違っている。こういう点が守られている背景には、どうやらイギリスの法律が関係しているようだ。仕事柄、緑に関することになるのだが、イギリスでは自分の敷地に生えている木でも、その木がある程度の大きさであれば、むやみやたらに切ってはいけないのだそうだ。切るとなれば役所の許可がいるし、もし許可が下りても切る代わりに同じ数の木を植えなければいけない。日本ではなかなか考えにくいことである。こうしたことが徹底されている事で緑の数が守られているというのは本当に素晴しい事だ。それにこちらに来て何よりも思うのだが、イギリス人は本当に自然が好きでそれに対して大きな関心を持っている。そういう事がこの国の美しい風景を作っている秘訣なのかもしれない。

イギリスの盆栽屋で働いて

自分はイギリスの盆栽屋で働いている。日本では造園屋に勤めていたため、業務の内容で全く初めて経験するというようなことはあまり無い。しかし、現在働いているのは文化も言語も全く違う国だ。やはり驚くことも多い。最も驚いたのは植物の扱い方だ。もしイギリスの方法で植物を植えたとしたら、日本では十中八九枯れてしまうだろう。風土の違いはここまで違うものを生み出すのかと感心した。
そんな文化の違うこの国で、この盆栽屋は本当に良くやっていると思う。一歩足を踏み入れたら「ここは日本か」と勘違いするくらいに。ここで自分は主に庭を作りや、造園用の植木の手入れをしている。会社としては盆栽がメインであるため、日本庭園となるとやはり自分が指導する立場になる。まだまだ修行中の自分が、指導などとおこがましい気もするが、日本人としてまがい物を作るわけにいかない。そんな気持ちを抱きながらこの庭を作った。

  

これは、会社に作った庭である。会社にある材料を使って、日本庭園の作法を守り、限りなく日本と同じ様に作った。社長も同僚も盆栽屋に来るお客様方も、とても気に入った様子であった。自分としては正しいものを正しく受け入れてくれたように思えて、とても嬉しく思う。
しかし、現在の英国ではイギリス人の注文でイギリス人が作る日本庭園は、日本人の目から見た場合おかしいと感じる点が多い。お客が満足ならばそれでも良いのかもしれないが、日本文化の一部である日本庭園だと考えた場合は、やはり少しでも正しいものが良いのではないだろうか?それとも、それも新しい形として受け入れたほうが良いのだろうか?自分は今、その点で大きくジレンマを感じている。
残りの研修期間に達成したいこととしては、やはり一つでも多くの庭をイギリスに残していきたいという事だ。そしてまた、他のイングリッシュガーデンを沢山観察することで、新しい庭のスタイルを見出す可能性を広げていきたい。